写真集の集め方

2014年に「アート写真集ベストセレクション101」(玄光社刊)という本を上梓した。同書は約15年間に渡ってアートフォトサイトで紹介してきた新刊写真集の蓄積があって実現したものだ。そこには、入門ガイドとして「フォトブック・コレクションの魅力を探る」というパートを設けて、「写真集の集め方」についてかなりマニアックに説明している。興味のある人そちらを参考にしてほしい。

ここでは写真集コレクションを開始するときに知っておくべき基本情報だけを説明しておこう。日本では写真が掲載されている本はすべて「写真集」と分類される。アートフォトサイトでも広い一般的な意味で「写真集」を使っている。しかし、現在の欧米のアート写真界では、写真集は、フォトブック、モノグラフ、アンソロジー、カタログなどと色々な種類に分けられているのだ。日本と同様の広い意味で使われるのが、フォトグラフィック・ブック、もしくは フォトグラフィカリー・イラストレイテッド・ブックとなる。そのなかでフォトブックはアート写真のポートフォリオ作品と同様に、ひとつのテーマとコンセプトを通して表現されるアーティストのメッセージを本のフォーマットで提示したものだと理解されている。いまやアート写真の一分野としてコレクションの対象になっているのだ。つまり、写真集を集めるという行為は、写真家のフォトブックを通しての自己表現を、オリジナルプリントと同様にアート作品として愛でて購入するのと同じ意味になる。

それ以外の種類の写真集にも触れておこう。モノグラフもしくはアンソロジーは、画集と同様に一人の作家の過去の作品をコレクションして編集されたもので、資料的な意味合いが強い写真集だ。いわゆる音楽CDのベスト・ヒットやグレイテスト・ヒットをイメージしてほしい。しかし、それらの中にも、キュレーター、ギャラリスト、評論家などの編者が明解な見立てを行ったうえで編集されたものがあり、それらはフォトブックになりうるとされている。
 カタログは、美術館やギャラリーで行われる作家の回顧展に際して出版されるもの。 しかし、これも作家やキュレーターの独自の視点でまとめられていればフォトブックになり得るのだ。 

分類基準がやや複雑なので、初心者は混乱するかもしれない。今後、写真集購入を検討するときは、それがどのカテゴリーのものかを意識的に確認してみよう。判断に迷ったときは、数多く出版されているフォトブック・ガイドを参考にしてもよいだろう。前記の「アート写真集ベストセレクション101」のほかにも、「The Photobook: A History」(Martin Parr他、Phaidon刊)もお薦めだ。同書はすでに4巻が刊行されている。またレアブック市場の価格相場を参考にするのもよいだろう。レアブックとはすでに絶版になった貴重なフォトブックという意味。いわゆる古書市場のことだ。洋書レアブックの価格相場は、英文のアーティスト名と写真集タイトルがわかれば容易にネット検索が可能だ。アート業界で評価されているフォトブックはコレクションの対象となっており、プレミアムが付いていることさえあるのだ。一方でアート作品と認められていないものは、絵画の画集と同様に資料的価値しかない。いくら古くても高い値段は付いていない。

上記の資料や情報はフォトブックの価値判断の目安として利用してもよい。しかし、実際に買うときは、自分の心が揺さぶられるものを選ぶのが鉄則だ。フォトブックもアート作品と同様なのだ。フォトブック・コレクションの世界は非常に奥深い。自分の経験や知識が増えるごとに、写真家の新たな視点に気付くのだ。コレクションが増えるごとに自分の成長が実感できる、まさにライフワークとして付きあっていける趣味ではないだろうか。

アートフォトサイト
福川 芳郎