エドワード・スタイケンの"The Pond Moonlight"など高額落札が続出した2006年のアート写真オークション。ニューヨーク秋のオークションも引き続き好調な結果だった。
しかし、希少性が高くない作品への需要はやや低下してきた印象がある。ここ数年の相場上昇で過小評価 ぎみになっていた予想落札価格が上方修正されたことも影響しているだろう。
今季のオークションカタログも前回同様に分厚かった、売り手が増加しているのは明らかだ。 出品数に対する落札率の低下も市場の落ち着きをあらわしているだろう。
クリスティーズは10月17日と18日の2日間に約350作品の入札を行った。
総売上は約759万ドル(約9.1億円)。複数出品者による 入札では史上最高額の売り上げだった。落札率は前回より低下し79%。目玉はカタログ表紙の、
ロバート・メイプルソープ作"Andy Warhol, 1987"。リネンにプリントされ、黒色の特製木フレームにマウント
された1点ものだ。発表当時は、写真ではなくミニマムアートだと評価された名品だ。予想落札価格を大幅に上 回る約64万ドル(約7400万円)の作家オークション最高値、当日の最高額で落札された。
ハーパース・バザー誌のアート・ディレクター、デザイナー、写真家として知られるアレクセイ・ブロドビッチの5作品も注目された。 火事で彼のほとんどのネガ、プリントは消失したといわれ、オークションへの出品は非常に珍しい。動きの
早いバレーをスローで撮影した写真は、ロバート・フランクやウィリアム・クラインが行った、アレ・ブレ・ボケの元祖と近年ますます再評価されている。代表作の落札予想価格、約1.2万ドル(約140万円)を大きく上回る約4.5万ドル(約524万円)で落札された。
ササビースは10月17日に来歴が確かな複数のコレクション248点のオークションを開催。
総売り上げは約648万ドル(約7.45億円)。落札率は前回より低い約81%だった。最高額落札はアンセル・アダムスの代表作"Moonrise,
Hernandez, New Mexico, 1941"。彼のアシスタントを勤め、 生涯の友人だった写真家パークル・ジョーンズのコレクションからの出品。1948年にプリントされた初期作品だ。1000枚以上プリントされたといわれる作品だが、抜群の来歴と希少性を兼ね備えていたので入札は過熱。
約61万ドル(約7000万円)という作家のオークション最高値で落札された。最近相場急上昇中の ロバート・フランク。1977年にプリントされた写真集"The
Americans"1986年刊の表紙イメージ、"New Orlreans (Trolley),1955"が
約20万ドル(約2300万円)の作家のオークション最高値で落札された。
フィリップス(Phillips de Pury & Company)は10月18日と19日の2日間に渡り350点のオークションを開催。
総売上は約448万ドル(約5.15億円)とほぼ昨年秋の水準だった。落札率は約75%。ウィリアム・エグルストン作品が落札上位を占めた。最高額は15枚セットの"Troubled
Water, 1980"。予想落札価格を大幅に上回る約22万ドル(約2500万円)だった。その他、現代アート系作家の、トーマス・ルフ、カンディダ・ホーファー、ウォフガング・ティルマンスなどが高値で落札された。
今秋のオークションでは、落札予想と実際の落札価格との乖離が少なくなってきた。同時に過熱気味だった高い落札率も低下した。今後、米国経済の減速見通がささやかれる中で現在の価格レベルは当面の高値圏のような感じがする。経済状況にもよるのだが、来春のオークションでは作品がより選別されるようになるだろう。圧倒的に売り手有利だった市場にやや変化の兆しが見えてきた。
*落札価格は手数料込みの価格。円価は1ドル115円で換算し四捨五入。
(内容はコマーシャルフォト誌1月号の筆者の連載コラム「アートフォト最前線」を加筆しています。)
Art Photo Site 福川芳郎