オークションカタログ
昨年来のサブプライムローン問題に端を発した世界的な金融危機と景気後退の影響を懸念する意見は多い。しかし、資金が石油、穀物などの実物商品に流れたことから、アートも同様な実物の金融商品の一部なので影響は大きくないという意見もある。
今年の春のニューヨーク・アート写真オークションは引き続き好調さを維持したといえよう。これは過去数年の市場上昇により質の高いコレクションが大量に売りに回り、それらをオークション・ハウスが巧みに選択、編集することで非常に高いクオリティーのセールが実現できたからだ。トータルなんと10ものオークションが開催された。また、カーラ・ブルーニのヌード写真出品など、彼らの話題作りがうまかったことも勝因のひとつだろう。しかし、セールによっては一部に強弱が入り混じったまだら模様の結果も垣間見えた。現代アート市場はトレンドが上昇期から安定期となり、資金が評価の定まった有名作家に集中する傾向が強まっているという。今後アート写真市場も同じような傾向が強まるのではないだろう。また、落札手数料上昇の影響が特に中間価格帯に今後でてくるという懸念を持つ市場関係者も多い。(今年から競売手数料が2万ドルまでが落札価格の25%、50万ドルまでが20%となった。)アート市場には景気の影響が遅れて反映される。早くも市場の関心は世界経済の先行きと、2008年秋のオークションに移っている。
ササビースは4月7〜8日に3つのオークションを行った。総売り上げは約1730万ドル(約19億円)。落札率は良好な約91%だった。ほぼ、総売り上げ金額ベースではほぼ落札予想価格の上限で売れたことになる。エドワード・ウェストン、ポール・ストランド、ダイアン・アーバスなど22作家のオークション落札記録が更新されている。
単一コレクションから売りに出された"The Quillan Collection of Nineteenth and Twentieth
Century Photographs"
に出品された69点の総売り上げは約890万ドル(約9.8億円)。ポール・ストランドのプラチナ作品"Rebecca, 1923"は、予想落札価格下限に近い約64.5万ドル(約7100万円)で落札。アウグスト・ザンダーの"Werkstudenten,
1926"は、予想落札価格上限の倍近い約49.3万ドル(約5423万円)で落札。最高額落札はロット19のエドワード・ウェストンの"Nude,1925"。落札予想を大きく上回り、100万ドルを突破、約161万ドル(約1億7699万円)という作家のオークション最高値で落札。リチャード・アヴェドンの"Marilyn
Monroe, 1957"は、総エディション4のヴィンテージ・プリント。予想落札価格上限の4倍近い約45.7万ドル(約5027万円)で落札されている。
もうひとつの単一コレクション "Edward Weston's Gifts to His Sister and Other
Photographs"の総売り上げは約153万ドル(約1.68億円)。最高額落札はエドワード・ウェストンの"Nude
on the Sand, Oceano,1936"。落札予想を大きく上回り、32.5万ドル(約3575万円)で落札された。複数委託者のオークションの総売り上げも約687万ドル(約7.55億円)といずれも好調だった。最高額落札はダイアン・アーバスの"
A Family on the Lawn One Sunday in Westchester, N.Y., 1968"。落札予想を大きく上回り、約55.3万ドル(約6083万円)という作家のオークション最高値で落札された。
フィリップス(Phillips de Pury & Company)は4月9日に2つのオークションを開催。総売り上げは約327万ドル(約3.59億円)。8日夜に予定されていた、ダイアン・アーバスの入札は中止された。
"Collection of Corbeau et Renard assembled by Gerd Sander"の
総売上は約153万ドル (約1.68億円)だった。不落札率が約50%を超える結果だった。
複数委託者のオークションでは392点が出品。総売上は約174万ドル(約1.91億円)。落札率は今回も評価が難しい現代アート系作家が多かったこともあり約62.7%とやや心配な結果だった。一番の高額落札は、ピーター・ベアードの巨大な写真コラージュ作品、"Girraffes
in mirage on the TaruDesert, Kenya, 1960" で、約32.5万ドル(約3575万円)で落札された。
クリスティーズは4月10、11日にかけて5つのオークションを開催。総売り上げはササビースを僅かに上回る約1760万ドル(約19.3億円)とアート写真部門での過去最高を更新した。ウィリアム・エグルストン、アンリ・カルチェ=ブレッソン、アーヴィング・ペンなどでオークション最高値を記録している。
最初は、リチャード・フレイ氏がコレクションしたレア・ブックコレクションの入札だった。状態、来歴ともに素晴らしく、また多くは作家サイン入りということもあり、非常に好調な入札だった。総売上は約260万ドル(約2.86億円)。落札率は92%。最高値を付けたのは、Jindrich
Stysky "Emilie prichazi ka mne ve snu,1933"で、約19.3万ドル(約2123万円)で落札。エド・ルシェの"A
complete set of artis's book, 1963-1978" は、約12.1万ドル(約1331万円)で落札されている。フォト・ブックは完全にアート写真の一分野として
市場が確立していることが強く印象付けられた。
Gert Elferingコレクションから3回目となる、"Photographs from the collections
of Gert Elfering"総売上は約437万ドル(約4.81億円)。落札率は84%だった。本オークションは、フランス大統領サルコジ氏の奥さんである元スーパー・モデル、カーラ・ブルーニのヌード写真が出品され大きな話題になった。ミッシェル・コンテにより1993年に撮影された、32.5X22.5cmのモノクロ・プリント。
作品の落札予想価格は、3000〜4000ドル。なんと入札開始価格は10,000ドル。結局、驚異的な91,000ドル(約1000万円)で落札された。
アービング・ペンによるダイトランスファープリント、"Mouth for L'Oreal, NY,1986"が2番目の値段をつける。予想落札価格上限を上回る約20.5万ドル(約2255万円)で落札。ヘルムート・ニュートンのイコン的なイメージ、"Sie
Kommen,1981"の2枚組作品がが約24.1万ドル(約2651万円)の最高値で落札された。
ダイアン・アーバスの単一コレクション、"The Bruce and Nancy Berman collection of
photographs by Diane Arbus"
は完売、総売上は約137万ドル(約1.51億円)だった。
複数委託者のオークションの総売り上げは約467万ドル(約5.15億円)。落札率は67%だった。最高額落札はアーヴィング・ペンのプラチナ・プリントの代表作品"Cuzco
Children,1948"。1971年にプリントされている貴重作。落札予想を大きく上回り、約52.9万ドル(約5819万円)という作家のオークション最高値で落札された。
アンセル・アダムスの単一コレクション、"Photographs by Ansel Adams from a California
collection"には 様々な状態と質のプリントが混在していた。しかし総売上は約468万ドル(約5.14億円)。落札率は89%だった。最高額落札は"Clearing
Winter Storm, Yosemite, 1944"で 落札予想を上回る、約48.1万ドル(約5291万円)で落札されている。
*落札価格は手数料込みの価格。円価は1ドル110円で換算し四捨五入。
Art Photo Site 福川芳郎