Martin Schoeller: Survivors;
Faces of Life After the Holocaust

Steidl, 2020

Martin Schoeller(マーティン・ショーラー)

マーティン・ショーラー(1968-)は、ドイツ・ミュンヘン出身でニューヨーク在住の写真家。デジタル技術を活用した、巨大サイズのクローズ・アップのポートレート写真で知られています。彼の写真では余計な部分がすべてそぎ落とされ、被写体のフォルムと光だけが残されます。世界的有名人と市井の人々を同等に扱うことで、見る側が持つ有名人の既成概念を揺さぶります。彼は、ベッヒャー夫妻の給水塔のタイポロジー・シリーズ(類型学)からヒントを得ており、同じアプローチをポートレート写真に取り入れようとしたのです。ポートレート写真の世界で、新しいスタイルとヴィジョンを推し進めている類まれな写真家として評価されており、いまでは世界中の美術館が作品を展示、コレクションしています。

本書は、1945年1月27日のアウシュヴィッツ解放の75回目の記念日に際して、ショーラーがイスラエル在住のホロコーストの生存者のポートレートを撮影したもの。ヤド・ヴァシェム(Yad Vashem/世界ホロコースト追悼センター)の協力で行われたプロジェクトです。
ショーラーの見る側を引き付ける魅力的なヴィジュアルは、ホロコーストの極悪さを目撃したユダヤ人の男女の歴史が刻まれ風化したかのような顔面を表現しています。彼らはユダヤ人だったことで根拠のない苦悶と苦しみを被り、その人生はホロコーストの暗黒の時代に永遠に変えられました。私たちは被写体の目の奥底を見ることで、彼らが耐え忍び復活してきた経験や、精神力の強さの痕跡を感じ取ることができるでしょう。すべてのポートレートは、彼が「最も純粋なポートレートのフォルム」と呼ぶように、全く同様の断固たるスタイルで撮影。そして、それは個々被写体の非常に小さい詳細の表情までを強調します。見る側は撮影環境の影響を受けずに被写体の表現を読み解くことが求められます。
本シリーズでは、すべての被写体の顔はホロコーストの生き残りの人たちの人生そのものなのです。

ハードカバー: 168ページ、サイズ 21.8 x 27 cm、
75点の図版を収録。

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