あの日の彼、あの日の彼女。 1967-1975

アスコム, 2006

横木安良夫、文・角田光代


2006年1月に写真展を開催して好評だった横木安良夫の"teach your children"シリーズが分厚い写真集になりました。直木賞作家の角田光代氏により「あの日の彼、あの日の彼女 1967-1975」というメイン・タイトルが付けられました。横木の写真はもちろん、イメージに触発され創作された角田氏のショートストーリーも秀逸です。A4変形 324点、全352ページ。限定100部のデジタルプリント付き特装版も制作されました。

若かりし横木は単に昭和の日本をドキュメントしたのではありません。アメリカ文化の影響を受けた若者が、"カッコいい"と感じるシーンを内側から撮影しているのです。当時の日本写真は、社会のアウトサイダーの写真家が時代をえぐり出すようなドキュメントが中心でした。横木の写真は社会のインサイダーだった若者による時代のインサイダーの写真なのです。それゆえ、多くの人が共通の夢を描けた60年~70年代日本の気分と雰囲気が色濃く映しこまれています。横木がまだプロデビュー前であり、自分の感覚に忠実でピュアーな視点を持っていたからこそ、これらの奇跡のような素晴らしい写真が撮影できたのでしょう。
写真にしみ込んだ時代の匂いは、皆が共通の夢を持てたときの気分を懐かしく呼び起こさせます。価値観が多様化し生き方に思い悩む現代人はそんなイメージに強烈に魅了されるのです。30年以上前のイメージはいま見ても古さを感じません。若者にとって、"カッコいい"ことは時代を超越するのです。戦後生まれの人は誰でも、自分の過去とコミュニケーションできるイメージを横木の写真集の中から発見できるでしょう。特に団塊世代にとって、カッコよさを追求していたころの青春グラフィティーそのものです。1枚の写真がきっかけで見る人それぞれの青春ストーリーが蘇ることでしょう。