2023-1-15

  

Seminar(ファインアート・フォトグラファー講座)

2000年以降の急激なデジタル化により、いまや写真は誰でも簡単にきれいに写せるようになりました。特別な技術を必要としない真の民主的な表現方法になったのです。楽しみ方も、プリントするだけでなく、パソコンや大型テレビで楽しむのが一般的です。また最近のスマートフォンの普及で、写真は撮って家族や友人とコミュニケーションするためのツールにもなっています。20世紀のアナログ写真と21世紀のデジタル写真は全く別物であると言っても良いでしょう。

21世紀のファインアート写真は、デジタル化進行とともに、現代アートが市場を席巻したことでその姿が大きく変化しました。いまや、写真作品であっても製作の背景にある表現者のテーマやアイデア/コンセプトの提示が求められるようになってきたのです。従来のモノクロの抽象的な美しさと、ファインプリントのクオリティーを愛でるような美意識は作品要素の一部でしかなくなったのです。一方でデジタル化により、作家はアナログ時代の様々な技術的な制限から解放されました。いまや写、平面作品だけではなく、立体作品やフォトブックでも写真表現は可能です。作家は写真で真の自由表現が可能になり、その創造性が真に問われるようになったのです。しかし、ただ自分のやりたいことを追求すればファインアートになるという意味ではありません。ファインアート写真の世界には様々なカテゴリーと、そこでの価値観や方法論が存在し、また時代とともに変化しています。作家はそれを理解したうえで創作することが求められます。

ファインアート・フォトグラファー講座は20年以上にわたり、写真技術ではなく、ファインアート写真作品のソフト面の知識、考え方、方法論、ノウハウや、市場の最前線での情報などを提供してきました。また日本独自のファインアート写真の評価基準を「写真の見立て」という視点で提案してきました。参加者の中からは、ギャラリー契約作家、写真賞受賞者、ギャラリストが生まれています。ライフワークとして写真で社会と関わっていきたいと考える人の参考にもなってきました。作家にならなくても、写真を通して、新しい人生の可能性、社会とのコミュニケーション、楽しみなどを追求することは可能なのです。

残念ながら2020年2月の開催を最後に、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で開催を中断しております。講師と参加者とのきわめて近い距離での作品レビューなどを伴うからです。多数の方から開催再開についてお問い合わせをいただいていますが、感染の本格的な収束にめどがたたない状況が続いており、感染リスクを抑える適切な環境が整わない中での開催は見合わせております。誠に申し訳ございません。 状況を見極めたうえで、まずは個人向けの講座からの再開を検討しています。講座再開の案内は、公式サイト、アートフォトサイトのメールマガジン、インスタグラムなどで行う予定です。どうか今しばらくお待ちください。


ファインアート写真の見方表紙

一方、2021年4月玄光社より、本講座の講師福川芳郎による「ファインアート写真の見方」が刊行されました。本書は、ファインアート・フォトグラファー講座で今までに行ってきた講義内容がベースになっています。講座に興味をお持ちの方はぜひご一読いただければと思います。

amazon でもご購入いただけます。