2023-2-16

  

エルンスト・ハース

HAAS, Ernst(1921-1986)

エルンスト・ハース(1921-1986)は、オーストリア出身。カラーを得意とするフォトジャーナリスト・写真家として、約40年以上のキャリアを持っています。第2次大戦後に地元ウィーンで写真撮影を独学で開始。その後ライフなどの影響力のある雑誌で数多くの写真作品を発表しています。またロバート・キャパに誘われてマグナム・フォトに参加、創立者以外の最初のメンバーとなります。1950年に仕事でニューヨークへ行き、それ以来アメリカに在住。1961年、ニューヨーク近代美術館は、彼の10年間の写真作品の回顧展を開催。同館で行われた初のカラー写真による展覧会となります。ジョン・ヒューストン監督の映画「聖書(The Bible)」(1966年)に携わったことがきっかけとなり、1971年に写真集「The Creation」を制作しています。ハースのカラー作品はシャッタースピードに工夫を凝らし、画像にブレを与え、独特の躍動感を生み出しているのが特徴。「現実を主観に変換することに魅力を感じている」と語っています。
ここ数十年は、写真がアート表現の一部とみなされるようになったことで、彼の写真は一時期"商業的すぎる"、"十分にシリアスでない"という批判も受けるようになります。実際のところ、いままでは若い世代の、ウィリアム・エグルストン、スティーブン・ショアー、ジョエル・マイロウィッツよりも低い評価でした。しかし彼の作品には今まで一般には全く知られていなかった面もありました。ハースは依頼された仕事と並行して、代表作よりも研ぎ澄まされて自由で、また合成的、複雑な要素を持つ斬新な作品を制作していたのです。
2011年に刊行され、2016年に再版された"Ernst Haas: Color Correction"(Steidle刊)では、より抽象的な都市のカラー作品が紹介され、彼の作家性が再注目されています。いまでは、彼の他に類を見ない色彩の深みと豊かさ、リリシズムとドラマチックな緊張感に満ちたこれらの写真は、国際的に高い評価を受けています。現在、ハースの写真は、ニューヨーク近代美術館、ワシントンDCのナショナル・ポートレート・ギャラリー、ウィーンの近代美術館などに所蔵されています。