2023-1-20

  

ハリー・キャラハン

CALLAHAN, Harry (1912-1999)

叙情的でパーソナルな写真で有名なハリー・キャラハンは長年に渡ってアーティストとしてまた写真教育者として写真界に影響を与えてきました。
彼は米国ミシガン州デトロイト出身。ミシガン州立大学の工学部で学びクライスラーの経理部に職を得ます。1938年ころから趣味で写真を始め、アマチュア写真クラブのデトロイト・フォト・ ギルドの会員になります。1941年にクラブで講演したアンセル・アダムスの写真と偶然出会います。その精密な描写、豊かなグラデーションに強い影響を受け、大型カメラでの写真活動を開始します。 1944年にジェネラル・モーターズの写真担当の技術者になります。1946年にはバウハウスの伝統を継いでモホリ=ナギが主宰するシカゴ・デザイン研究所(後のイリノイ工科大学) に招かれ教授となります。 1948年にはニューヨーク近代美術館のエドワード・スタイケンの評価を受け、“写真におけるアブストラクト”などのグループ展に参加しています。1964年からはロード・アイランドデザイン学校の教授になっています。

彼の主要3作品は日常生活とその延長上でとらえた表現に集中しているのが特徴です。すぐ近くにあるテーマに長期間に渡って取り組み、その対象に新たな美や視点を発見しています。 キャラハン夫人をモデルにした“エレノア”シリーズはアルフレッド・スティーグリッツのジョージ・オキーフのポートレート写真に影響されたと語っています。 10年以上に渡って夫人をモデルに様々な技法が試されています。“ザ・シティー”は彼が住んでいたシカゴなどをモチーフにして、都市住民の 重圧を表現しています。“ランドスケープ”では木、草、海岸などの自然のディテールを強調した風景を抽象的に表現しています。撮影方法には多重露光も 利用しています。彼は社会的なモチーフを一切選ばず、パーソナルな作品制作中心でした。またアンセル・アダムスのような世間が関心を集める壮観な風景を撮影していないことから一般での知名度は高くありません。 しかし玄人のコレクター、評論家、美術館関係者に非常に高い評価を受けています。 キャラハンにとって写真とは人生の意味を見つけ出す行為であるとともに、日々を過ごし、幸せになること自体でもあったのです。