2023-1-21

  

ジョエル・マイロウィッツ

MEYEROWITZ, Joel (1938-)

ジョエル・マイロウィッツは1938年ニューヨーク生まれです。オハイオ州立大学で美術を学んでいます。 卒業後1965年までコマーシャル分野でアート・デレクションやデザインの仕事を行い、その後フリーの写真家になります。
アート・ディレクターとしてロバート・フランクと仕事をしたことをきっかけに 1963年からカラーでストリートのスナップ・ショットを開始しています。それらの作品は写真集“ワイルド・フラワー”(1983) で見ることができます。写真はほとんど独学で、その後カラーよりコントロールしやすいモノクロにも取り組んでいます。
1976年から、より豊かな色と描写を求めて8X10の大型カメラとカラーネガフィルムを使用するようになります。 1976年~1977年までに東海岸のリゾート地コッド岬で撮影され、ボストン美術館で個展が開催されたのが代表作の“ケープ・ライト”です。

彼の作品は繊細なカラー描写など表面的な部分が注目されがちです。しかし 実際は、光の効果が生かされた静謐な19世紀風景絵画や エドワード・ホッパーの風景画など歴史的な影響や引用が多く見られます。その後、“セントルイス&アーチ”(1981)、“夏の日”(1985)、“Bay/ Sky”(1993)などの作品を発表しています。
現在ではアメリカ写真界の新分野であるニューカラー写真で、ウイリアム・エグルストンらとともに代表する作家と評価されています。1990年代にかけては、かつてのフランクの様に米国内を旅して、何気ないアメリカの日常風景の中から、新しい非日常世界を発見し大型カメラで撮影しています。

2001年9月11日に発生した同時多発テロ後は、犯罪現場と見なされ立ち入りや写真撮影が禁止されていた世界貿易センタービル倒壊跡地に入り、 ビル倒壊現場を約9ヶ月間撮影した唯一の写真家となりました。彼は、「写真なしでは歴史を後世の人には伝えられない」という強い信念と使命感で撮影を続けたといいます。その仕事は2006年秋に写真集「アフターマス(Aftermath)」にまとめられ、同名の写真展は世界中を巡回し多くの観客を動員しました。

2010年代、マイロウィッツは主に静物画写真の制作に専念します。都会のストリート写真の喧騒から、より田園的な環境とヨーロッパの美術史に根ざした文化に興味が移ったのです。このシリーズでは、画家のモランディやセザンヌが所有していた、あるいは影響を受けたオブジェを彼らのアトリエで撮影。写真集「Cezanne’s Objects」(2017年刊)、「Morandi’s Objects」(2015年刊)として発表しています。