2025-3-15

  

Robert Frank: Hope Makes Visions

Pace Gallery, 2025

Robert Frank(ロバート・フランク)

ロバート・フランク(1924-2019)は、50年代の繁栄する米国のダークサイドをパーソナルな視点で撮影し、写真集"The Americans"(仏版1958年刊、米国版1959年刊)にまとめたスイス出身の写真家。60年代には、活動の中心を写真から映像に移し、主に16ミリ映画の製作に専念しています。1972年には写真集第2作目“私の手の詩”を日米で出版。この本は1989年に新版("Lines of My Hand")として再版されています。映画製作の合間にポラロイドカメラでモノクロ写真の撮影を行なっており、1980年代後半から再び写真に取り組むようになります。その後は、ドキュメンタリー、フィクション、自伝的な要素をジャンルを超え融合させたような革新的作品を製作します。

本書は、米国ニューヨークのペース・ギャラリーで、2004年11~12月にかけてて開催された展覧会とフランク生誕100周年を記念して出版されたものです。タイトルの「Hope Makes Visions」は、ロバート・フランク作品"Fire Below - to the East America, Mabou, 1979”に描かれたスケッチに由来します。このスケッチは、フランクが2019年に死去した際、ジューン・リーフ&ロバート・フランク財団に遺贈された写真と書類の中に含まれていました。これは、フランク作品の中から未公開作中心に展覧会を構成するというアイデアのきっかけとなった多くの発見のひとつです。

この展覧会の企画は、フランクのアーカイブにあった多数のプリントボックスに散在していた、オリジナルの順序で保存されている写真の断片、つまり未分類の「変種」をつなぎ合わせる作業を通してさらに発展しました。展示では、1955年から2016年までの、彼のあまり知られていない写真、コラージュ、スケッチ、マケットなどがセレクション。写真家であり映画監督でもあるフランクの様々なメディアにわたるプロセスを詳細に紹介しています。彼のキャリアを通しての成長と実験へのコミットメントを示し、フランクの新たなアーティスト像を浮かび上がらせる試みです。キュレーションは、 ジューン・リーフ&ロバート・フランク財団ディレクターのシャールザド・カメル(Shahrzad Kamel)が担当。収録テキストは作家のオーシャン・ヴオン(Ocean Vuong)によります。
本書は、正統的な偉大なアーティストのロバート・フランクへの繊細なオマージュだといえるでしょう。

ペーパーバック : 90ページ、サイズ 24.77 x 31.12 cm、多数の図版を収録



Robert Frank