2025-6-1

  

Richard Misrach: Cargo

Aperture, 2025

Richard Misrach(リチャード・ミズラック)

リチャード・ミズラック(1949-)は、米国の様々な政治、社会、文化的な問題をテーマに作品を長年にわたり発表している写真家です。
代表作に、かつては不毛の地だった砂漠環境が文明化による激変したシーンを撮影した"Desert Cantos"(1987)、 北西ネバダで行われていた爆弾実験をテーマにした"Bravo 20: The Bombing of the American West(1990)"、 荘厳な空を撮影した"The Sky Book"(2000)、ゴールデンゲイトブリッジ、湾、海の眺めを定点観測した”Golden Gate”(2001)、美術館の傑作絵画の細部を撮影した"Pictures of Paintings"(2002)などがあります。2001~2005年にかけては、高い位置から海岸や水辺の小さな人間の姿を撮影し、 自然の中での人間の小さな存在を思い起こさせる"On the Beach"シリーズに取り組んでいます。

ミズラックの新作「CARGO」は、彼が自宅玄関先から制作した”Golden Gate”シリーズを思い起こさせる作品です。彼は本作で、サンフランシスコ湾の光、水、天候に焦点を当てています。パンデミックとそれに伴うロックダウンの中、2021年にこの作品群の制作を開始。サンフランシスコの同一の場所から、数ヶ月から数年かけて、異なる時間帯に撮影されたこれらの写真は、周囲の世界を単一の視点から記録する彼の持続的な興味を反映しています。
作品ステーツメントで、ミズラックは湾内の船のデザイン、機能、歴史、そして画像に暗示される数千人の労働者についても考察。「これらの船の背後には、目に見えないながらも驚くべきグローバルな労働力が存在しています。彼らは船を建造し、船内に居住し、荷物を積み下ろし、海や運河を航行させ、時には危険な状況下でも最終的な停泊地へ向かうのです」と記しています。さらに「これらの貨物船が象徴する非凡な成果と価値と共に、彼らは私たちの重要な、相互に結びついた国際貿易の複雑で困難な側面も表しています。この歴史的瞬間において、それらは地球温暖化という脅威を暗示しています」と指摘し、グローバル貿易が環境に与える深刻な影響についても考察しています。なお同名の写真展は、2025年1月~3月にかけて、ニューヨークのPACEギャラリーで開催されています。

ハードカバー : 156ページ、サイズ 38.7 x 2.54 x 29.85 cm、約64点の図版を収録。



Richard Misrach