2023-10-14

  

America and Other Myths: Photographs by Robert Frank and Todd Webb, 1955

Yale University Press, 2023

Robert Frank(ロバート・フランク), Todd Webb(トッド・ウェブ)

1955年、2人の写真家がジョン・サイモン・グッゲンハイム財団からの奨学金を得て、アメリカ横断の旅を行いました。 ロバート・フランク(1924-2019)は全米を車を走らせて移動し、ハイウェイ、バー、人々などを撮影します。一方でトッド・ウェブ(1905-2000)は、「消えゆくアメリカーナとその代わりとなるなにか」を探して全米を踏破します。
応募の過程で2人は互いのことを全く知りませんでした。有名写真家ウォーカー・エヴァンスの推薦を取り付け、2人はともに根本的に異なる方法で、国を横断して探求を行いました。 その結果、フランクの作品は写真史における歴史的なフォトブックとして広く賞賛されている「The Americans」(1958)となりますが、 ウェブのプロジェクトはいままでほとんど知られていませんでした。
フランクとウェブの写真は、ハイウェイ、パレード、薄暗くタバコの煙の充満したバーを撮影するなど、驚くほどよく似ています。 それぞれが相手の作品を知らなかったため、これらの類似点は当時の大衆文化の傾向や共有された社会のイデオロギーによる影響だと考えることができるでしょう。 結局のところ、2人とも 「アメリカン・ロード・トリップ 」の理想主義的な純粋さに挑戦するプロジェクトに携わっていたのです。 同じ場所で撮影された根本的に異なる写真は、二人の写真家の多様な視点とアプローチを明らかにしています。
フランクの粒子が粗く、風変わりな作風は、アメリカ社会のダークサイドを厳しく検証するのに最適でした。 スイス生まれの移民であるフランクは、アウトサイダー的な視点を生かしたのです。 デトロイト生まれのウェブによる、優しく、注意深く構成された画像は、アメリカの生活様式と土地の独特な個性を称えています。 結局のところ、二人の写真作品を比較することで、彼らのプロジェクトの複雑さと、「アメリカ 」を単一のビジョンを捉えることの難しさが明らかになります。

本書は、ヒューストン美術館(Museum of Fine Arts, Houston)で、2023年10月から行われ、全米を巡回する展覧会に際して刊行。 ウェブの1955年の写真を初めて出版し、この並行するプロジェクトを初めて結びつけた画期的な試みです。 フランクとウェブの、同じような被写体や場所に対する異なる視点とアプローチ、フランクの代表作とウェッブの比較的無名なシリーズに対する評価の違い、 そして世紀半ばのアメリカ人のアイデンティティ形成におけるロードトリップの位置づけを、100点以上の写真と文章で解き明かしています。

ハードカバー : 184ページ、サイズ 26.01 x 2.01 x 27.79 cm、約115点のモノクロ図版を収録。